気持ち悪い花、怖い花をみたい!という物好きの方、いらっしゃいませ。
花、それは植物の次の命を作る器官。植物は動けないので、生殖の際に第三者の力を借ります。その中でも虫など他の動物をパートナーに選ぶものは、彼らをあの手この手で惹きつけるため、ターゲットに合わせ奇々怪々な外見や匂いを作り上げました。
今回は、そうした花の中で特に見た目が気持ち悪いといわれるものをピックアップしていきます。お楽しみに。
トケイソウ
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トケイソウは、3つに分裂した雌蕊が時計の針、放射状に並ぶ花びらが文字盤に見えることからその名がつきました。例の雌蕊といい、色使いといい、どうにも自然のものらしからぬ、抽象芸術のような見た目。気持ち悪いといわれるのも理解できる一方、不安になるほどの美しさ、とも。
トケイソウは、英語ではパッションフラワー (passion flower)。その名から連想するように、パッションフルーツはトケイソウの1種の果実です。
このpassion、「情熱」の意味と思われがちですが、実際は「キリストの受難」を指す言葉。原産地である中南米でトケイソウを見たキリスト教の宣教師たちが、この花を「十字架上の花(かつてアッシジの聖フランチェスコが夢に見たという)」と信じた、というのが由来だそうです。
ショクダイオオコンニャク
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学名:Amorphophallus titanum
ショクダイオオコンニャクは、ギネスに記載されている世界最大の花。なのですが、
イギリスの王立園芸協会が厳選した「醜い植物」を集め、ネット投票したところ、見事ナンバーワンに輝いた不名誉なヤツです。
最悪な1位ですが、実は4〜6年に1度、3日間だけしか開花しない「幻の花」。肉が腐ったような臭いを放ち、昆虫を惹きつけるといわれています。
ちなみに、世界一大きな花といえばラフレシアを思い浮かべる方が多いと思いますが…
- ラフレシア…単体の花のサイズでは世界一。直径90cmほど。
- ショクダイオオコンニャク… 直径1.5m・高さ3.5m、見た目ではラフレシアより大きい。が、正確には「花序」といわれる花の集合体。一つ一つの花は小さい。
とはいえ、外から見るぶんにはどう見ても1つの花ですので、世界最大の花として語られるのです。
原産地は、インドネシアやスマトラ島。熱帯雨林に自生します。
↑この世の終わりみたいな学名もまた一興。キャラ渋滞
アリストロキア・ギガンティア
photo byアリストロキア・ギガンティア | 大阪の植物園-咲くやこの花館-
学名:Aristolochia gigantea
独特の縞模様が美しい花。正確にいうと花に見える部分は、ガクです。独特の匂いを発し昆虫を誘い、受粉を行います。
奇妙な造形の一方、色は比較的地味。
アリストロキアの名の由来はギリシア語で、アリストス(良い)+ロキス(出産)。
- 安産に効果があると思われていた
- ガクの部分が胎児の形に似ている
などの説があるそうです。
植物園で比較的よく見られる花ですので、興味がある方は行ってみてはいかがでしょうか。
原産地はブラジル。
ブラックキャット
photo by【公式】京都府立植物園 on Twitter:
学名:Tacca chantrieri
その形から「黒猫」の名で呼ばれる植物。ただし、黒猫なのは日本だけで、海外ではバットフラワー(コウモリ)、デビルフラワー(悪魔)などの名前で呼ばれるれるよう。文化によって様々なものに見える、神秘的な造形の花です。
複雑そうに見える花を分解すると、
- コウモリの羽のような部分:ガク
- 中央のたくさんの星型:花
- ヒゲのように見える部分:花をつけなかった柄(え)。不稔性花柄
という構造です。
花の色は黒く見えますが、正確には濃い紫。芋のような地下茎を作ります。
原産地は、インド北東部、東南アジア。
ラフレシア
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学名:Rafflesia
奇妙な花といえば、ラフレシアを思い浮かべる人も多いでしょう。大きな花を咲かせる寄生植物。特にラフレシア・アーノルディという種類は、直径90cmにもなる巨大な花を咲かせ、単体の花のサイズでは世界最大の大きさを誇ります。
死肉のような見た目、汲み取り便所のような匂いでハエをおびきよせます。目立ちそうですが、開花期間は3日ほど、生息地も限られており、なかなかお目にかかれないよう。ショクダイオオコンニャクと並び、これまた「幻の花」。う○こ臭い巨大な花の繁殖スタイルといえるでしょう。
ラフレシアは他の植物から栄養を吸収する、寄生植物。ラフレシアの本体は糸状の細胞列からなるごく微細な構造で、これが寄主の体内に食い込んでいます。そこから直接花を咲かせるため、根も茎も葉もありません。全寄生植物です。
根も葉もない噂話が咲くのも納得ですし(?)、プロのヒモ男なので自立して生きる用の器官が全部退化して清々しいです(?)。
原産地は、東南アジア島嶼部、マレー半島。
サイコトリア・エラータ
学名:Psychotria elata
娼婦の唇に例えられる艶かしい花、サイコトリア・エラータ。赤い部分はガク、花は中央の黄色い小さな構造です。
この植物が属するPsychotria属は、極めて多くの種を含み、研究や分類が充分に進んでいないとか。たまにある「分類の墓場」に近い感じかもです。
セクシーですが、残念ながら(?)ハチドリやチョウをおびきよせるための構造と考えられています。まぁそろそろ人間を誘惑して花粉媒介させる花が進化してきてもいいとは思います(?)
原産地は、中南米の熱帯雨林。
ギンリョウソウ
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学名:Monotropastrum humile
ユウレイタケの名前でも知られる、幽玄な造形の植物。緑色でないためしばしば植物とすら認識されず、キノコのような名前で呼ばれたりします。
ギンリョウソウは「腐生植物」に分類される植物。樹木と共生している菌類(キノコ)に寄生し、菌類経由で樹木の栄養を得る、という生態です。さらにはゴキブリに果実を提供する代わりに種をまいてもらうスタイル。
山地のやや湿ったところに生育します。菌類から栄養を得ているため光合成を行なわず、それゆえ光を必要としません。そのため暗い森でも育つことが可能。また、光合成をしないので色素がなく、ほとんどが透けた白です。
精霊にでも出会ったかのような、不気味かつ美しい造形です。
花の生殖器官たる所以なのか、種によっては他の生き物を誘き寄せるため進化した造形ゆえなのか。奇異な花には惹き込まれるエッセンスがあるように感じますね。ありがとうございました。